18:35から20:30へ。仕事とは、現実に応答すること。
今日、ひとつの出来事があった。
18:35。
レストランの客席から、「音量を少し下げてほしい」
という声が届いた。その瞬間、私たちは考えた。
音量を下げることが答えなのだろうか。いや、違う。本当の問いは、「この時間に、本当にふさわしい音楽とは何だろう。」ということだった。
20:30。
Moon Stage。
Melissaはそれまで演奏していたラテンのセットをやめた。でも、それはエネルギーを失うことではなかった。むしろ、その夜の月明かりに寄り添うように、
* Don't Know Why
* Moon River
* てぃんさぐぬ花
* さよならCOLOR
* Luna
* Fly Me to the Moon
という流れを編み直した。それは、曲を並べたのではない。Moon Stageという時間、そのものを演奏していた。終演後、子どもが駆け寄ってきた。「お姉ちゃん、いい曲ばかりありがとう!」歌が上手だった、と言ったのではない。「いい曲ばかり。」その言葉が、とても印象に残った。選曲は誰にでもできる。けれど、自ら演奏し、歌い、その場の空気に合わせて時間そのものを編集することは、誰にでもできることではない。それは、音楽の演奏ではなく、音楽のキュレーションだった。
今日、私はもう一つ、大切なことを学んだ。仕事とは、目の前の現実を受け止め。次のステージでより良い体験をつくること。これは音楽だけの話ではない。デザインも。教育も。ホテルも。組織も。きっと同じだ。世界は、理想を語る人だけでは変わらない。
現実を観察し、そこから一歩だけ良い方向へ編集する人によって、少しずつ変わっていく。今日の演奏は、そのことを証明してくれた。「音量を下げてください。」という一つの出来事を、「Moon Stageとは、どんな時間なのだろう。」という問いへ変えた。
そして、その答えは、ある女性の涙になり、子どもの「ありがとう」になり、家族の「楽しかったね」になり、最後には、大きな手拍子となって返ってきた。
もちろん、そこには偶然もある。今日という日だけの巡り合わせもある。でも、私たちは偶然を待っていたのではない。現実に応答した。だからこそ、偶然が生まれる余地が生まれた。
Melissaと私は、自分たちのやり方やエゴをいったん脇に置いた。才能も。技術も。心も。身体も。そのすべてを使って、18:35に起きた出来事を、20:30には別の景色へと変えてみせた。
それは、一日で身についた技術ではない。何年も積み重ねてきた観察と対話、そして改善の積み重ねがあったからこそできた。私は、この仕事の姿勢を信じて生きていきたい。世界を変えるためではない。目の前の時間を、昨日より少しだけ美しくするために。
その積み重ねが、誰かの旅の記憶になり、いつか、世界を静かに変えていくと信じて。