A Note from Tonight
音楽が届いた夜
今夜、うれしいことがあった。ライブが終わったあと、メリさんが教えてくれた。ステージから客席を見ていたら、泣いている人がいたという。
私は後方でライブミックスをしていたので、その姿には気づかなかった。
そのとき歌っていたのは、映画、思い出のマーニーの“Fine On The Outside”だった。
はて、その人に何が起きていたのだろう。旅の途中だったのか。誰かを思い出していたのか。
昔の自分と再会していたのか。
それとも、ただ夜風と波音と歌声が重なり、
心の奥にしまわれていた感情が静かにあふれただけなのか。
理由はわからない。
でも、わからないままでいいのだと思う。
音楽は答えを与えるものではなく、人それぞれの記憶へ続く扉を開くものだから。
私は最近、ライブミックスのことをずっと考えていた。
声と楽器の距離。リバーブの深さ。
波音との混ざり方。夜風の中での響き方。
ほんの少しの違いで、音楽は景色になったり、ただの音になったりする。
今夜、ひとりの人の涙が教えてくれた。私たちが作っているのは
ライブイベントではない。音楽が誰かの心に辿り着くための時間なのだ。
救われた人を見ていると、わたしも救われる。
音楽って素晴らしい。
人間って素晴らしい。
そんな当たり前のことを、もう一度思い出した夜だった。